■ お知らせ ■

第11回長崎心臓リハビリテーション研究会のお知らせ

★ 第11回長崎心臓リハビリテーション研究会が下記の通り開催され、86名の参加者で
  盛会のうちに終了しました。次回第12回研究会は2018年3月に佐世保で開催予定です。

  日時:2017年3月11日(土)、16:00-18:00
  場所:長崎新聞文化ホール 珊瑚の間
         長崎市茂里町3-1 TEL:095-844-2412



  開会の挨拶      当番世話人 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 
                   内部障害リハビリテーション学教授 神津玲先生


  一般演題 (16:00-17:00)

        
          座長:櫻川循環器内科クリニック院長 櫻川浩一郎先生

   
1)  「術前フレイルが心臓血管外科術後に及ぼす影響」

                        長崎大学病院リハビリテーション部 森本陽介先生


   2)「CABG後の腹膜透析、血液透析併用患者に対する心臓リハビリテーション介入の経験
                   
                虹が丘病院リハビリテーション科 眞壁和子先生


   3)「当院における心不全教育入院の現状と課題 -看護師の立場から-」

                長崎大学病院10階西病棟看護師 馬場妙子先生
                           

     4)「心臓リハビリテーション開設から4年間を振り返って」
                 
                北松中央病院心臓リハビリセンター 小畑久美子先生



  
特別講演  (17:00-18:00)

                   
座長:長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 
                   内部障害リハビリテーション学教授 神津玲先生


     「心不全のリハビリテーションにおけるトピックス」

             北里大学病院リハビリテーション部 主任

                                  神谷健太郎先生



      閉会の挨拶        代表世話人 長崎大学循環器内科教授 前村浩二先生 



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医療の話
 
                    外来型心臓リハビリテーション

1.    外来型心臓リハビリテーションの意義   

心臓リハビリテーション(以下、心リハ)は、一般的に第I相(急性期)、第II相(前期回復期、後期回復期)、第III相(維持期)に分けられ、外来型心リハは後期回復期から維持期に相当する時期に行われる1)

急性期から前期回復期の心リハは、救急治療室、一般病棟、運動療法室などで医師、コメディカルの監視下に行われ、多くの施設で綿密なリハビリプログラムのもと、安全かつ効果的な心リハが施行されるようになった。一方、後期回復期から維持期の心リハは、急性期病院を退院後、図1に示すようにリハビリ施設、運動施設、診療所なども担当し、通常退院後に外来通院の形で行われる。

       図1:心リハ各時期を主に担当する心リハ施行施設

      

 これらの施設で心リハのみを専門的に行っている所は多くはなく、また在宅運動療法へ移行する例も加わり、この時期では非監視下心リハの割合が増加してくる。

対象患者は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満などの生活習慣病を有している場合も多く、これらは運動療法の好適応となる。また、慢性心不全に対する運動療法の効果は確立され、高齢者の心血管疾患にもその適応は広がっている1)。以前は運動が推奨されていなかった腎機能障害を有する心疾患患者でも、心リハを継続することにより運動耐容能および腎機能の改善が得られ2、3)除外対象にはならない。

心血管疾患患者を対象とした心リハは、身体的効果のみでなく精神的効果、二次予防の面でもその有用性は確立されているが1)、その根拠となっている多くの大規模試験は、維持期まで含めた長期間での成績に基づいている4−7)。すなわち、心身両面において心リハの効果を得るためには、如何にこの時期に患者のモチベーションを維持し、心リハを継続させるかということが重要な課題となり、そのためには外来型心リハの意義は大きいと言える。

2.    我が国の現状と問題点

我が国では、心リハ対象疾患を受け入れる循環器専門病院で、急性期治療に引き続いて回復期から維持期まで連続して心リハを施行している施設は必ずしも多くはない。特に退院後は心リハを継続する患者の割合が極端に減少する。2006年に報告された急性心筋梗塞診療に関する全国調査では、外来通院型心リハの実施率は循環器専門医研修施設においてもわずか9%であった8)

大まかではあるが、図2に我が国の心リハ対象疾患の診療状況についての印象をまとめた。


2:我が国の心リハ対象疾患(急性心筋梗塞、狭心症、心不全、開心術、
   大血管疾患、閉塞性動脈硬化症)における心リハ診療状況


      

 急性期はほぼ9割以上で循環器専門医の診療を受けられるが、そのうち回復期心リハを経験するのは約半数ぐらいにとどまる。これは心リハ未実施の急性期病院も少なくないこと、入院日数の短縮により心リハを経験せずに退院する例もあること、院内の心リハスタッフへの連携不足などの要因が考えられる。少数ながら、一般病院やリハビリ施設などへの転院を経て退院する場合もある。退院後外来通院心リハを行う割合は約1割しかないと思われる。もちろん地域差もあるが、現状は急性期病院からかかりつけ医に直接戻る場合が多く、そのうち外来型心リハを施行している診療所はごくわずかの循環器医に限られている。20133月の時点での心大血管疾患リハビリテーション料届出医療機関数は計788施設で、そのうち診療所は51施設(施設T:16、施設U:35)と全体の約6%に過ぎない9)。これには診療報酬に対する費用対効果が必ずしも良くないという現実がある。とくに施設基準取得に関する負担の問題は大きく、外来型心リハを行うホームドクターの普及は容易ではない。

このような現状で外来型心リハを推進させるためには、心リハ実施病院とかかりつけ医との連携が不可欠であり、地域によっては徐々に広がりつつある。そのような環境にない地域では、在宅運動療法にも力を入れる必要がある。そのためには入院中に心リハを体験させ、退院後も自分の生活環境や身体症状にあった運動を具体的に指導すること、心リハ継続の必要性を認識させることなどが重要である。

3.    外来型心リハの実際

 外来型心リハの内容は、急性期に引き続いて退院後も同じ病院の外来で行う場合、リハビリ目的で改めて新たな心リハ施設で行う場合、かかりつけの診療所で行う場合などがあり、その施設の設備、スタッフの数や職種において多少異なるのは当然であるが、基本的な運動方法や流れには大きな違いはない。ここでは、診療所外来で心リハを行っている立場から述べることにする。

定期的に外来型心リハを行うに際しては、患者側にもいくつかの阻害因子がある。

 当院外来を受診した心リハの保険適応を有する患者の連続103例のうち、心リハ参加者は23例(参加率22.3%)であったが、参加しなかった80例についてその理由を図3に上げた。


    図3:心リハ適応患者103例における、通院心リハ未施行80例の
       主な理由(重複あり)


     

 仕事のため頻回の通院が困難であるという理由が最も多く(48.7%)、以下、自宅が遠く通院費用がかかる(20.0%)、高齢および身体的理由(20.0%)が続き、自宅や運動施設で施行する(17.5%)、心リハを希望せず(13.8%)、運動療法禁忌(3.8%)などの理由であった。当院はいわゆるかかりつけの診療所であり、多職種スタッフがそろった外来型心リハ施設とは若干異なるかもしれないが、仕事、通院距離や手段、経済的理由などが阻害因子として多いのは同様であろう10)

 医療側の問題としては、保険診療に必要な施設基準の取得がある。心大血管疾患リハビリテーション料I(1単位205点)、あるいはII(1単位105点)で保険診療を行うために必要な運動設備、器械器具、スタッフの確保が前提となる。

 外来型心リハは、入院中に体験した多職種スタッフによる指導、支援、運動療法を踏まえてそれを長く継続させることが主な目的で、担当は外来医師・看護師が中心となることが多い。現在の保険診療では、心リハ開始後150日までしか認められていないが、それ以降でも主治医が必要と判断すれば定期的に実施計画書を更新しながら、月13単位の範囲内で維持期も継続可能である。

 基本的に心リハの内容は入院中に行われていたものと同様でよいが、施設および心リハスタッフが変わる場合もあり、また自宅に戻るという環境の変化により、まず心機能の把握や体調のチェックから始める。具体的な運動療法の内容は各施設の設備・スタッフに応じて適宜工夫すべきであるが、当院で行っている外来心リハ内容をもとに基本的な流れを述べる。

1)    問診、バイタルチェック

まず病歴、基礎疾患、心機能、合併症などを十分把握し、患者の生活習慣を加味した上で心リハスケジュールを立てる。血圧、心拍数、体重測定は毎回行い、受診の度に体調に変化がないか、運動療法に支障がないかどうかをチェックする。

2)    ウォーミングアップ

準備運動はストレッチ、体操などを10分程度の時間をかけて行う。年齢、心機能、身体状況に応じて、立位、坐位および臥位でのストレッチを工夫する。

3)    運動療法

運動処方があればそれに準じて運動を行うが、外来通院の時期になると安全域も広がり目標心拍数も急性期や回復期の時点と同じとは限らない。再評価した方がよい場合や運動処方がない場合は、心機能をチェックしたうえで心肺運動負荷試験を行い、心リハ開始前に運動処方を決定する。  心肺運動負荷試験が行えない場合は、カルボーネンの式:[(最大心拍数−安静時心拍数)×k+安静時心拍数、k=0.4-0.6で患者の年齢や心機能などを参考にして決定]による目標心拍数を設定する。最大心拍数は最大運動負荷にて決める必要があるが、運動負荷試験自体施行可能な施設は限られている。最大心拍数を決められない場合は(220−年齢)を代用するが、β遮断薬などの心拍数を下げる薬を服用中の患者では過度の負荷を強いることもあり、計算値より少なく設定した方がよい。目標心拍数のみの運動処方では、特に不整脈を有する場合は不正確であり、必ずボルグ法による自覚症状の上限を決めておく必要がある。

 運動方法は有酸素運動を基本とし、比較的運動強度を定量的に評価しやすいトレッドミルや自転車エルゴメーターを使用するのが一般的である。レジスタンストレーニングも低強度であれば安全に施行でき、特に高齢者や慢性心不全患者の筋力保持・強化に効果が期待できる。運動方法はそれぞれの特徴を生かして患者の年齢、身体状況に合わせて選択する。

4)    クールダウン、バイタルチェック

 運動終了数分前から徐々に負荷量を減らして行き、終了後は休憩をはさみ10分程度のストレッチを行う。この時点で水分補給を行い、運動終了後も自覚症状の変化、血圧、心拍数をチェックする。

 全課程修了後に、ホットパックやウォーターベッドなど心身のリラックス効果をもたらす機器類を使用できれば、交感神経系緊張緩和に効果的で患者の満足度も得られる。

4.    継続の工夫

 維持期を通じて運動療法を行うことは二次予防に有効であるが、可能なら外来型心リハに定期的に参加することが長期継続につながる。そのためには有効かつ無理のないプログラムを作成し、それを継続させるための工夫を行う必要がある。

 当院で長期的に外来型心リハを継続できている患者を参考にして、その要因を検討し、継続のための対策10項目として表1にまとめた。

              表1:外来型心リハを継続させるための対策

項目 内容

1)外来診療との併用

基礎心疾患、合併症の診療を定期的に行う

2)来院しやすい曜日、時間の調整

施設側と患者側の都合をすり合わせる

3)スタッフ・患者間の意思疎通

患者とのコミュニケーションは必要条件である

患者間のつながりにも気を配る

4)継続することの意義の説明

医師、スタッフから継続の意義を定期的に説明する

5)定期的な検査と説明

採血結果、運動耐容能の変化などを適宜還元する

個々の目標を明確に提示する

6)病状変化の把握

身体症状があればその改善を優先する

改善するまでは無理に運動を進行させない

7)心事故を発生させない

適正な運動処方、定期的な見直し、密な観察が必要

8)患者の経済状態の把握

個々の状況に応じて医療費削減を考慮する

9)医療機器を工夫する

心身両面において費用対効果のある機器を選択する

10)カウンセリングとQOLの向上

悩みを聞きできる範囲でカウンセリングを行う

QOLを落としている問題に共に取り組む


1)外来診療との併用:基礎心疾患、合併症の診療を定期的に行い、受診時に心リハも併せて行う。

2)来院しやすい曜日、時間の調整:スタッフ数が限られている施設では曜日、時間を限定した方が効率的である一方、患者側の都合もあり、できるだけ両者が無理なく継続できるようスケジュールをすり合わせる。

3)スタッフ、患者間の意思疎通:患者とコミュニケーションをとることは必要条件である。長期になると同じメンバーと顔を合わせることも多く、同病者の連帯感、疎外感など、患者間のつながりにも気を配る

4)継続することの意義の説明:維持期になっても運動継続が必要であることを医師、スタッフから定期的に説明する。

5)定期的な検査と説明:採血結果や運動耐容能の改善などを定期的に示し、個々の目標を明確に提示する11

6)病状変化の把握:身体症状があればその改善を優先し、無理に運動を進行させない。

7)心事故を発生させない:これには適正な運動処方、定期的な見直し、患者の体調を密に観察することが必要である。

8)患者の経済状態の把握:医療費は心リハ中断の一因ともなり得る。個々の状況に応じて医療費削減も考慮に入れる。

9)医療機器を工夫する:年齢、身体能力、身体状況に応じた医療機器を選択し、体験することにより、運動療法継続のモチベーションを維持する12。また運動後リラックスできる装置なども活用し、心身両面において費用対効果のある機器の選択を考慮する。

10)カウンセリングと生活の質(QOL)の向上:外来型心リハを多職種で担当できる施設は少なく、限られたスタッフでの対応を余儀なくされる。そのためにはスタッフの研修にも力を入れ、業務を兼ねる必要がある。患者のストレスを発散させるためには悩みをよく聞くことが重要で、できる範囲でカウンセリングを行う。またQOLを落としている問題に対して、共に取り組む姿勢を見せることも必要である。

5.    在宅運動療法との併用

 心リハ保険診療の時期的制限の問題もあり、後期回復期から維持期へ移行するにつれて外来型心リハ継続率は低下しがちである。維持期も運動療法を継続させるためには、非監視下運動療法すなわち自宅での運動も併せて指導する必要がある。非監視下であっても適切な運動処方のもとで運動が継続できれば、運動耐容能の改善も期待でき二次予防につながる13

 在宅運動療法を安全かつ効果的に行うためには、適切な運動強度による運動処方を提供し、監視型心リハでの体験をもとに自己管理の方法を具体的に理解してもらう必要がある。自己管理のためにチェックすべき項目は、運動前後の血圧、心拍数、毎日の体重、一日の歩数などで、動悸、息切れ、胸痛、倦怠感などの自覚症状の変化に留意するのは言うまでもない。外来診療医およびスタッフはこれらの項目を定期的にチェックし、運動前後のウォーミングアップ・クールダウンの実施、服薬管理、水分摂取などの指導も行う。

在宅運動療法の場合も、患者の体調を密に観察して管理指導を行うことや維持期以降も運動を継続するためのモチベーションを保たせることが重要である。

 

<文献>

1)野原隆司、他. 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2012年改訂版).

2)Takaya Y, Kumasaka R, Arakawa T, et al: Impact of cardiac rehabilitation on renal function in patients with and without chronic kidney disease after acute myocardial infarction. Circ J 78:377-384, 2014.

3)猪熊正美、田屋雅信、高柳豊史、他. 心疾患患者の外来運動療法が腎機能とその関連因子に与える影響について.  心臓リハビリテーション191):65-69. 2014.

4)Belardinelli R, Georgion D, Giovanni C, et al: Randomized, controlled trial of long-term moderate exercise training in chronic heart failure: effect on functional capacity, quality of life, and clinical outcome. Circulation 99(9): 1173-1182, 1999.

5)Brodie DA, Inoue A, Shaw DG: Motivational interviewing to change quality of life for people with chronic heart failure: a randomized controlled trial. Int J Nurs Stud 45:489-500, 2008.

6)Taylor RS, Brown A, Ebrahim S, et al. Exercise-based rehabilitation for patients with coronary heart disease: systematic revive and meta-anakysis of randomized controlled trials. Am J Med 116: 682-692, 2004.

7)Clark AM, Hartling L, Vandermeer B, et al. Meta-analysis: Secondary prevention programs for patients with coronary artery disease. Ann Intern Med 143: 659-672, 2005.

8)後藤葉一、斎藤宗靖、岩坂壽二、他. 我が国における急性心筋梗塞回復期心臓リハビリテーションの全国実態調査. 心臓リハビリテーション111):36-40, 2006.

9)小山照幸:心大血管疾患リハビリテーション料届出医療機関の動向 −2012年度診療報酬改定後の心臓リハビリテーションの現状―. 心臓リハビリテーション192):250-255. 2014.

10)畦地萌:心臓リハビリへの参加と継続を阻害する因子とその対策. In:日本心臓リハビリテーション学会, . 心臓リハビリテーション必携. 2010, p312-314.

11)柳英利、進藤直久、大嶋直志、他. 当院における急性心筋梗塞退院後の外来心臓リハビリテーションの継続率向上に向けた取り組み. 心臓リハビリテーション182):183-192. 2013.

12)二階堂暁. 当クリニックにおける外来心臓リハビリテーションの現状. 心臓リハビリテーション191):38-42. 2014.

13)松岡昌彦、武藤由佳、船田幸奈、他. 非監視型心臓リハビリテーション外来における運動継続率と運動耐容能の関連.  心臓リハビリテーション191):119-123. 2014.



 ■ 病気の話 ■ 

胸痛の見分け方:狭心症の特徴とは? 

 胸痛を起こす重要な疾患として狭心症・心筋梗塞があります。両者とも心臓に血液を送る冠動脈の狭窄あるいは閉塞が原因となって起こるもので、短時間の血液供給不足で狭心症が起こり、長く続いて心筋細胞が壊れると心筋梗塞になるのです。いずれも初期治療が非常に重要ですが、狭心症は発作の時間が短く症状のないときに病院を受診しても診断が確定できないことも少なくありません。そこで狭心症症状の特徴を上げて、胸痛が起こったときに注目すべき事柄について述べます。

胸痛の性質は?

 狭心症では、胸の“痛み”というより“圧迫される”、“しめつけられる”、“重苦しい”などの症状として自覚され、“刺されるような鋭い痛み”、“チクチクする痛み”ではありません。また、症状は呼吸や咳で強くならない、身体の向きや体位変動に左右されないのも特徴で、そのような場合は呼吸器の病気や胸壁由来(肋骨や肋軟骨、肋間神経、肋間筋肉などによる痛み)が考えられます。

<胸痛の部位は?>

 典型的には前胸部(胸の真ん中)です。しかし、時には下顎(歯)、上腹部、首、肩、両腕、背部などへの放散することもあり、虫歯や胃の痛みなどと思ってしまうこともあります。狭心症らしくない症状としては、胸痛部分が指で示されるような狭い範囲である場合、押さえて痛い場合などで、やはり胸壁由来が考えられます。

胸痛の持続時間は?

症状は210分程度が多く、長くても2030分ぐらいで治まります。逆に秒単位の短いものは否定的です。30分以上続く場合、狭心症は否定的で他の原因が考えられますが、心筋梗塞の可能性はありますのですぐに病院を受診して心電図をとってもらったほうがよいでしょう。

どんな時に起こる?

 狭心症には労作性狭心症と安静時狭心症があります。労作性狭心症は冠動脈に強い狭窄がある場合に起こり、何らかの労作、例えば階段歩行、重い物をもつなど血圧や心拍数を上げる行為により出現しやすく、休むと治まるのが特徴です。安静時狭心症の多くは冠動脈のけいれん(スパスム)が原因で、早朝や夜間睡眠中に起こりやすいという特徴があります。また、狭心症は精神的興奮や食事(過食)でも起こり、朝方は発作が起こりやすい時間帯です。

胸痛の他にはどんな症状がでる?

比較的伴いやすい症状は、吐き気、嘔吐、冷汗です。また呼吸困難、意識障害を来すこともあります。これらの症状を伴うときは重症で心筋梗塞へ移行していることも考慮する必要があります。また、動悸、めまいを伴うときは不整脈が誘発されていることも考えられます。 狭心症発作の特効薬としてニトログリセリンの舌下錠あるいはスプレーがありますが、診断が確定できないときこれを診断に応用できる場合もあります。狭心症であれば舌下して15分で症状が改善しますが、効果がないときには狭心症が否定的であるか、逆に心筋梗塞を考える必要もあります。

狭心症・心筋梗塞は、必ずしも強い胸痛でなくても命にかかわる場合がありますので、以上のような症状が起こりましたら早めにかかりつけ医あるいは循環器専門医を受診してください。
   
                         
 2011.8.4 戸田源二



心房細動に関する話(原因と治療法)

Q1:心房細動って何?
 
 心臓の打ち方が乱れるのを“不整脈”と言いますが、心房細動は不整脈の一種で、脈は乱れっぱなしになります。心房は通常規則的に収縮して心室に血液を送る手助けをしていますが、心房細動では電気的には“かくいて”いるものの、いわゆる痙攣している状態で規則的に収縮していないのです。そのため心室も規則的に収縮しなくなり、脈が乱れます。一過性に起こるのを発作性心房細動、長く持続しているものを慢性心房細動と呼びます。

Q2:どうして起こるの?
 
 何らかの心臓病の人が心房細動になることが多いのですが、とくに基礎心疾患がないのに起こることもあります。起こしやすい危険因子としては、年齢、喫煙、高血圧、糖尿病などが上げられています。また、自律神経の乱れ、ストレス、飲酒などが影響していると言われています。甲状腺機能が亢進している場合にも起こりやすくなります。

Q3:こわい病気ですか?
 
 心房細動自体が命に関わる病気ではありません。しかし発作性心房細動が起こると、動悸、 胸苦しい、 息切れ、のどが詰まる感じ、などの自覚症状が出て不安感も強く、日常生活に支障を来たすことにもなります。

 最もこわいのは心房の表面に血栓ができ、それが血流に入り重要な血管を詰まらせる原因になることです。とくに脳血管に行くことが多く、心房細動は脳梗塞の重要な原因の一つなのです。

Q4:治療はどうするの?

病態に応じて、1)症状を抑える、2)正常の脈に戻す、3)血栓を予防する、治療が検討されます。
 発作性心房細動は、脈が速く打つことが多いため症状次第ではβ遮断薬などで脈を抑えます。正常の脈に戻すためには抗不整脈薬を使用しますが、電気的除細動(いわゆる電気ショック)や最近ではカテーテルアブレーション(カテーテルで直接心房筋を治療する)が行われることもあります。慢性心房細動になると正常心拍に戻すことは難しく、漫然と抗不整脈薬を服用しない方がいいかもしれません。
 血栓を予防するためには、おもにワーファリンという薬が使用されます。最近は、この治療を行うかどうかの指標として、CHADS2スコア(表参照)が参考にされています。
 いずれの治療法も、効果の見きわめと副作用に注意する必要がありますので、できれば専門医の治療が望まれます。

   表:CHADS2スコア:心房細動の脳梗塞リスク

危険因子

点数

C

Congestive heart failure (うっ血性心不全)

1

H

Hypertension (高血圧)

1

A

Age (年齢75歳以上)

1

D

Diabetes Mellitus (糖尿病)

1

S

Stroke/TIA (脳卒中/一過性脳虚血発作)

2

心房細動の人がこれらの危険因子を多く持っていると、
脳梗塞(脳塞栓症)の危険性が高い。
合計点数が1点の場合はワーファリンの服用を検討する。
2点以上の場合は、ワーファリンの服用が強く望まれる。                                              

                              2011.3.3  戸田源二


 ■ エッセイ ■
             

               
開業2年目・・

 「まだまだ暑いですね。お変わりありませんか?」
 こんな会話で始まる開業2年目の猛暑が、ゆったりと過ぎようとしています。
 1979年に始まった26年間の勤務医生活を終え、開業医として新しいスタートについてからあっという間に1年と9ヶ月が過ぎてしまいました。仕事にも慣れてようやく地に足がついた毎日が送れるようになったと感じられるようになり、少し医者としてのこれまでの歩みを振り返ってみました。
 折しも、大阪で世界陸上が開催され連日文字通りの熱戦が続いていますが、勤務医時代を競技に例えると、あたかも400mハードルのようでした。いくつかの障害に足をとられながらもどうにか乗り越え、決められたコースの上を周りの人に遅れないように、できるだけ速く必死に走っていたような気がします。前半は6つの関連病院に勤務し、非常に充実した研修をさせていただきました。後半13年間は大学病院でしたが、国立大学医学部の変貌を目の当たりに体験し、仕事の面ではさらにスピードアップが求められました。陸上競技のように成績をタイムで表すことはできませんが、どうにか決勝までは残れたかなという満足感はありました。
 一方、開業生活を陸上競技に例えると、クロスカントリーあるいはマラソンでしょうか?トラック競技でないことは確かなようです。スタート直後はたくさんのランナーに周りを囲まれ、前を走る人のする通りに手足を動かして必死に流れに乗ってきたような気がします。最近は少しずつ集団がばらけて、周囲のランナーおよび周辺の景色もよく見えるようになってきました。走っている道は初体験のコースで、山あり谷あり、ゴールがどこにあるのかもよくわかりません。しかし、順番を気にせず、四季折々の景色を楽しみながら自分でペースを調節して走っていこうと思います。四季折々の景色とは患者さんとのふれあいの中で体験できるものです。
 開院場所はそれまであまりなじみのなかった時津町で、あたかもパラシュートで舞い降りたようで五里霧中の船出でした。保険診療、病院経営など勤務医時代には人任せでできていた事も全て自分の責任で行わねばならず、同業者の助言や勧誘、様々な職種からの申し出など、色々迷うこともありました。しかし私にとって大きかったのは、先を歩んでいた先輩からの一言でした。開業してまもなく陣中見舞いに来て、「これまで通り、戸田君らしいやり方でやるのが一番いい」と言って頂きました。それでいいのだと思うと、肩の力が抜け足に力が入ったような気がしました。同門の先輩はあり難いものです。私も、後輩の道標になれるよう一歩一歩自分の道を歩いていきたいと思います。そして、いつの日かゴールが見えてきた頃に、“開業・・年目”の感慨として人生を満足感で振り返ることができたら・・と考えています。
                       
                               2007.8.31 戸田源二


          “笑い”と“運動”

 世はまさに「健康ブーム」です。
 テレビをつけると毎日のようにどこかのチャンネルで、ダイエットに効果的な健康食品や運動器具の紹介をやっていますし、家庭の医学風に様々な病気を特集して、やたら偏った病気の知識を視聴者に与えている風潮があります。昨今の殺伐とした世界情勢や近隣諸国による日本バッシングなどを考えると、本来は我が国の危機管理についてもっと議論しなければならない状況であるにもかかわらず、健康関連の番組で視聴率が稼げるということは、国民の興味が自己に向いているということに他なりません。
 こう考えると、“日本って平和なんだな”とつくづく感じてしまいます。
 さて、今の日本のように情報があふれている環境の中で生活していると、物事の本質が隠されてしまって、何がその人の健康維持に必要なのかわからなくなっている人も多いのではないでしょうか?
 厚生労働省は、平成12年から21世紀における国民健康づくり運動「健康日本21 http://www.kenkounippon21.gr.jp」を普及させ、健康寿命の延伸を目標に国民の健康作りを推進させようとしています。この健康寿命を延ばすということは、精神・身体両面で健康な状態を長く継続させるという意味に解釈してもよいかと思われます。そのような生活を想像してみますと、自ずからそこには“笑い”のある空間が浮かんできます。笑いには、声を立てて笑うlaughと微笑むsmileがありますが、健康な生活を送るためには両方の“笑い”をうまく活用して行けばよいのではないでしょうか? 
 今、お笑いブームで次々に若手芸人が出ていますが、健康を気にしている年代にも受け入れられる笑いを出せるセンスのある芸人はそう多くはいないようです。しかし、“笑うlaugh”という行為は、ヒトの免疫系にも好結果を及ぼして悪性疾患の抑制にも効果的であるという研究も発表されていますし、自分が心から笑えるような環境を作り出していけば、“微笑みsmile”のある健康な生活が送れることにつながると思います。
 健康寿命を妨げる要因を生み出すものに、いわゆる生活習慣病がありますが、それを予防するには食事療法と共に運動が有用であるということは、今や一般常識になりつつあります。しかし、この“運動”を実行に移して続けることは意外に難しいものです。身体的に支障のない人が運動療法を続けるポイントは、まず自分の興味と身体能力、そして生活環境に合った運動を見つけることだと思います。継続は容易ではありませんが、“もうひと頑張り”という気持ちを持ち続け、脳からβエンドルフィンが分泌されて、運動することに快感を覚えられればしめたものです。
 心肺機能の悪い人の運動はこれまで禁忌とされていました。しかし、過度の安静は逆効果であり、その人の心肺機能に合った適度の運動療法を行うことにより、主に自覚症状の改善、ひいてはQOL(生活の質)の向上につながることがわかりました。具体的な方法については専門医に相談すべきですが、肢体不自由者のパワーリハビリとともに、心不全の運動療法はリハビリテーション分野のトピックの一つになっています。心不全患者における運動療法のQOL改善効果は健常人にも勝ると言われており、これこそ精神的健康寿命を延ばすことにつながっていくのです。
 こうして考えて行きますと、心身共に健康な生活を送るためのキーワードの一つは“笑いと運動”であるとは思いませんか?
                               2005.12月 戸田源二